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珊瑚(さんご)さんの世直し 11 「綱引き」

 投稿者:真城 悠  投稿日:2015年10月26日(月)18時14分53秒
返信・引用
  『最後の綱引きで決着を付ける!』
 くぐもった声のボスによる場内アナウンスが響き渡った。
 ハンター組織の運動会が酔狂なことにまた開催されていた。
「いい年こいた大人が運動会って…」
 とか何とかいいつつ大人の女性の魅力をジャージに包んでいる珊瑚(さんご)だった。
「そういう割には付き合いいいよなお前」
 ポニーテールにハーフパンツの美少女は半田いちごことハンター1号である。今でこそこの健康的な美少女姿だが、華代被害が確定するまでは見上げるようなゴツい男だった。
 今じゃ珊瑚(さんご)よりも背が低い。
「あんたこそ似合ってるわよ。いっそブルマ履くかチアリーダーでもやれば?」
「ブルマはオレが廃止させた」
「いい判断ね。あんたのパンツなんぞ目の毒だわ」
 いちごが男時代からハンター3号である二条(旧姓・藤美)珊瑚(さんご)は折り合いが悪かった。
 今でも決して良好とは言い難いが、一人っきりになるのを見計らっていちごが使っている女子トイレや更衣室にづかづか入って来て脱いだりするのは普通なのでからかって楽しんでいるのかも知れない。
「何でお前とオレが同じチームなんだよ」
「ボスに聞きなさいよ。あたしだって旦那が向こうだし」
 一応チーム対抗戦と言う形を取っている。
 チーム分けは特に法則は無いらしい。男女で分ける訳にもいかない。というか基本的には男の方が多いし、男女で分けてしまっては流石に女性チームが不利だろう。
『勝利チームにはボーナスが与えられる!』
 一斉に会場がどよめいた。そのせいで『別に金銭とは限らない』という部分がかき消されてしまった。
「ほう…これは気合が入るな…」
 ボキボキと指を鳴らすいちご。とはいえ体重は下手するとかつての半分だ。どれだけ力があっても「綱引き」団体戦では不利である。
「ボーナスとあっちゃ手段は選べないわね」
 不敵な笑みを作る珊瑚(さんご)。

 お互いに綱を持った状態で構える紅組と白組。繰り返すがお互い男女混合チームであって色は便宜上だ。
『よーい!始め!』
 空砲が鳴らされた。一斉に両チームの参加者が気合を入れて踏ん張り始める。
 縄がピンと張り、互角である。
 だが、同時に珊瑚(さんご)が立ちあがって相手チームに向かって走り始めた。
「おい珊瑚(さんご)!テメエなにしてんだ!」
 いちごが怒鳴る。
 元々戦力としてそこまで期待出来る存在というワケではないが、40kg以上が減ったのは小さくない。
 しかし、珊瑚(さんご)はそれ以上に恐ろしいことを考えていた!
 動きやすいスニーカーを駆って相手チームに駆け寄って行く珊瑚(さんご)。すると、先頭の部下Aにタッチした!
「ちょっ!珊瑚(さんご)さんっ!!…うわ…うわあああああっ!」
 忽(たちま)ちの内に部下Aの肉体は女のものに性転換してしまう。同時に艶(なまめ)かしいボディラインで露出度の高い「バニーガール」へと変貌を遂げてしまったのだ!
「きゃっ!」
 思わずリアクションも色っぽくなったセクシーバニーに変わり果てた姿の部下A。だが何より致命的だったのが、真紅のマニキュアも毒々しい長い爪に細い指では綱を握りにくく、踵(かかと)の高いハイヒールでは踏ん張ることが出来ないということだった!
 流石に性転換&女装が初めてではないハンター職員だけあって、気を取り直して綱引きに参加しようとするのだが当然ながら簡単ではない。
 珊瑚(さんご)の攻撃は手を休めず30人中20人は締めていた男の内10人はバニーガールにしてやった。普段はいろんな色にしてやるサービスくらいはするのだが今日は黒一色だ。
 これで一方的に有利!…かと思ったが様子がおかしい。
 振り返ってみるとさっきバニーにした男たちが元に戻っている!
「…?何で?」
「そりゃ反則だよ珊瑚(さんご)?」
 目の前に珊瑚(さんご)の配偶者、ハンター29号こと二条九郎(にじょう・くろう)がいた。
 彼は「触れた男を女に性転換&女装」能力の正反対の能力を持っている。
 そう「触れた女を男に性転換&男装」能力である。
 そして、何故か珊瑚(さんご)被害者に触れるとその能力を打ち消して元に戻せるのだ。
「目には目を歯には歯を!」
 駆け出す九郎。
「…!?」

 綱引きは珊瑚(さんご)やいちごたちチームの勝利に終わった。
 九郎が「お返し」とばかりに敵方チームの女性を男にしまくったのだ…が、冷静に考えるまでも無く「女が男に」なったんでは綱引きに於いては単純な戦力アップになってしまうのだ。
「…何やってんのよあんたは…」
「…すまん」
「いや、すまんっつーか…あたしらのチーム勝ったからいいんだけどさ」
 目の前でしょんぼりしている九郎。
 ちなみに体質的にお互いの能力を打ち消し合うため、この二人はお互いに接触しても相手を変えることはない。基本的には。
『それではボーナスを発表する!』
 ボスのマイクに全員が固唾をのんで聞いている。
『勝利チーム全員に対して…本部支給のから揚げ弁当にから揚げを一つ追加する!あははははー!大サービスだぁ!』
 全員がジト目だった。
「…今日一日のことは何だったのよ…」
「珊瑚(さんご)…いいからやっちまえ。どうせ祭りだ」いちご。
「そのつもりなんだけど」

 その後打ち上げ用に置いてあったビールをガブ飲みした珊瑚(さんご)が泥酔して暴れまわり、逃げ惑う男のハンター職員を次々に性転換しまくった。
 直前に見ていたのか何だかしらないが、金髪のカツラに真っ赤な口紅のメイク、白いワンピースでまるでマリリン・モンローみたいなスタイルだ。
 あっという間に借りていた会場は、約半数がマリリン・モンローそっくりさん大会の会場みたいになってしまった。
 珊瑚(さんご)の能力は生まれつきの女には効かないし、華代被害が確定している人間にも効かない。だからいちごなんかは完全に対象外だ。
「い、いちご…」
「お、ボスじゃんか。良く似合ってるぞ」
「…あのなあ…」
 眉間に青筋を立てているセクシー美女。
 凛々しい伊達男も広がったスカートから伸びる脚線美やら、むき出しの腕、半分見えそうな胸の谷間では形無しだ。ハイヒールが歩きにくそうだ。
 これで足元から地下鉄が通り過ぎる風が吹きあがって来れば完璧である。
「あ、あれ何だ?」
「え?」
 そっぽを向いた瞬間にいちごのスカートめくりが決まった。
「きゃああああーっ!」
 映画みたいなシーンの再現、完成だった。

 お互いに酔っぱらってたせいかもしれないけど、あの後あたしら夫婦もお互いに性転換しちゃった。この能力って基本的にお互い効かないんだけど、不意を衝かれたりすると突発的に効いちゃうことがあるんだよね。
 旦那のセクシー美女っぷりは観てて複雑だったわー。あたしも二枚目男にされたんだけどさ。
 まあ、結婚前は毎日ファッションショー状態にさせてたんだけどね。女子高生からバレリーナ、バニーガールに花嫁姿まで一通り旦那の艶姿は観たことあるけども。
 え?その日の夜はどうしたかって?
 そりゃ内緒で。
 ま、あたしらがお互いに能力をくらったことで元に戻す能力も一時的になくなったみたいで、女になっちゃったハンター職員のみんなはしばらくそのままだったみたいだけど…ま、いいよね。所詮はお祭りなんだし。
 打ち上げの余興で女装する積りだった子はカラっぽのブラジャーに「詰め物がいらなくなった」って言ってたみたいだけどね。本物あるから。

 ま、とにかく最後にお祭りっぽくなったってことで。
 それじゃ!

おわり

http://ncode.syosetu.com/s3754c/

 
 

珊瑚(さんご)さんの世直し 10 「撃退」

 投稿者:真城 悠  投稿日:2015年10月23日(金)18時02分11秒
返信・引用
  「ねえねえお姉さんいいじゃないよ~」
 ちゃらいくせに身長の高い金髪男が若い女性にからんでいる。
 ここは渋谷のスクランブル交差点だ。
「やめてください…」
 さっさとその場を去りたいのだろうが、タイミング悪く信号は赤だ。そして正に先ほど赤になったばかり。その上周囲は人だかりで上手く逃げられそうにない。もっとも、そういうタイミングを見計らって声を掛けているのだろうが。
「ちょっとお茶しない?頼むよ」
「無理です…これから待ち合わせが…」
「それってカレシ?俺とお茶した方が楽しいよ?」
 こういうのに絡まれるのは珊瑚(さんご)も若いころはよくあった。
 大抵は冷たくあしらえばそれっきりだ。こいつらは「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」精神だから完全に脈が無いと判断したらすぐに切り替える。
 珊瑚(さんご)は見た目は美人だが興味のない人間相手には素っ気ない。そういうオーラは出しているつもりだが、相手も一か八かというところなんだろう。
 しかし、今日の男はしつこかった。
 絡んでいる相手が長い黒髪に白を基調とした清楚な出で立ち…何より大人しそうな物腰がこいつには「獲物」と映ったんだろう。
「これからどこに行くかだけでも教えてよ」
「…印象派の…美術展に…」
 近い距離にいた珊瑚(さんご)は「あちゃー」と思った。そんなもんまともに答える必要なんぞ無いのだ。自分なら「トイレのゲロ掃除だよ」とでも答えるだろう。
「いんしょうは?何それ」
 お前は知らんだろうな…と思う珊瑚(さんご)だった。
「モネとかゴッホとか…」
 どこまで真面目なんだよ…。
「にいちゃん、その娘(こ)脈ないよ。次行きな」
 思わず発してしまった。
「あぁ!?」
 間髪入れずに怒気を込めた唸るような威嚇を向けてくる。
「テメェに関係ねーだろうがババア!引っ込んでろ!」
 そんな大人しそうな子は大声出しただけで修復不可能なほど印象マイナスだよこのバカが。
「いいから失せろ」
「こんな真昼間から手袋なんぞしやがって気取ってんじゃねえぞブスが!」
 他人であろうと女性への悪口言ってるところを見せるのもアウト。どうにもならんね。
「ブスで悪かったな!」
 ちなみに若干トウが立っているものの、珊瑚(さんご)はかなりの美人である。客観的にもこの金髪の状況は不利だ。「何言ってんだこいつ」という空気が漂う。
「あ、あと一言忠告しとくよ。あたしには触れない様に」
 珊瑚(さんご)は読めた。確かにこいつは数を頼ってのナンパ男だが、この美術好き少女にこんなに拘るのは軽い「一目ぼれ」って奴みたいだ。だから諦めない。
「お前こそ引っ込んでろ!」
 どん!と肩を突き飛ばす金髪。
「きゃっ!」
 目の前で行われた暴力行為に身をすくませる美術少女。
「…触るなっつったでしょうが…遅いけど」
「何を言って…?…ええええええええーっ!?」
 そこにいたのは金髪のちゃら男ではなく、長い黒髪をなびかせ、露出度の低い装いをした大人しそうな女の子だった。くりっとした大きな瞳をパチパチさせている。可愛い。
「…咄嗟にイメージできなくてよ。まあそんな感じで」
 清楚なイメージの割に発育のいい乳房ごしに自らの身体を見下ろし、地面を引きずりそうな長いスカートをばさばささせる元・金髪。
 自らの女性化した肉体がやっと認識出来始めたらしい。同時にスカートの内側でむき出しの素脚同士がするっと触れあい、同時に生まれたばかりの乙女の柔肌を女物のつるつるすべすべの下着がなぶった。
「ひあっ!」
 その官能的な肌触りに寒気を走らせる。ここに至って遂に自らのアンダーバスト、そして乳房を抱きしめるブラジャーの感触に気付いたのだった。
「…これは…」
 茫然と立ち尽くしている美術少女。
「いいからあんた行きな。ほら、青だよ」
 同時に信号が青になっていた。一斉に流れ始める人ごみ。
「あの…ありがとうございます!」
 最後まで聞き取れなかった。
 そのまま人ごみの中に消えて行く。
 ふと気づくと、元・金髪の姿も無かった。…ショックでどっか行っちゃったか…まあいいわ。嫌がってんのにしつこくナンパし続けるなんて男の風上にも置けないってね。
 しつこくナンパしただけで一生女にしちゃうのは過酷過ぎるけど、何時間か女の身体にして女装させるくらいならいいでしょ。

 そんなこんなで昨日も今日も人助け。いや~気持ちがいいなあ。
 それにしても何でみんな「触るな」っつってんのに触るかね。ま、触らないならこっちから触りに行くけどさ。
 それじゃ!

おわり

http://ncode.syosetu.com/s3754c/

 

珊瑚(さんご)さんの世直し 09 「サプライズ」

 投稿者:真城 悠  投稿日:2015年10月22日(木)18時04分21秒
返信・引用
   怯えている女性の表情。
 薄暗い部屋の中で電話のコール音とナンバーディスプレイだけが光っている。
 抑揚のない電子音声が不在とメッセージを促すと、ブツッと言う音と共に話が始まった。
『いるのは分かってるんだよ~デュフフふふふ…』
 「ひっ!」と小さく声を出して布団をかぶる女性。同時にどんどんと玄関を叩く音がする。

『そういわれましてもね~』
 ダルそうな男の声。
『実害も出ないのに警察は動けないんですよ。大体その話だって本当かどうか分かりませんしね』
「本当です!信じてください!」
『この頃フラれた相手を腹いせでストーカーに仕立て上げる冤罪事件も多くなってましてねえ。国家賠償やらなんやらでお金もないんですわ』
「冤罪じゃありません!録音も残ってるんで聞いてください!」
 もう涙声になっていた。
『すいません。忙しいんでこれで。あ、その辺りに巡回増やしときますから』
 ブツッと切れた。
 目の前にはどうにか繋がっているパソコンのディスプレイがあった。そこには素っ気ないHPが開いていた。
「お悩み相談3535」

 飾り気のない地味なファッションで辺りを見渡している女。地面を掃除しそうなほど長く白いワンピースである。
 大きなつばの白い帽子が目印だった。
「どーも珊瑚(さんご)です」
 すらりと背の高いモデルみたいな美人である。
「…安田さん?約束の」

 目の前には美味しそうなコーヒーが湯気を立てている。
「ま、状況は分かったわ」
「…あの…それで…」
「うん。引き受けるよ」
「ありがとうございます!」
 安田頼子の声は大きくなっていた。
「分かってると思うけど繰り返すね。まず、あたし…二条珊瑚(にじょう・さんご)の存在は秘密ね。口外無用。誰にも喋っちゃ駄目」
「…警察にも…ですよね」
「その警察は頼りになったのかしら?」
「いえ…全く」
「まーそーだろうね。とにかく黙ってて。でないと引き受けないよ」
「はい!そりゃもう!」
「それから報酬は取ってないんでその点よろしく」
「…いいんですか?」
「困ってる人を助けるのが本分だからねえ。お金持ちの人なら自分でガードマンとか雇えばいいんだもん」
「ストーカーにも…効果あるんですか?」
「威嚇効果はあるんじゃない?ゴツい男が一緒にいる時に襲い掛かりたくないでしょ」
「お金で頼めるものなんですか?」
「そりゃ仕事だから。民間の用心棒会社なんて結構あるんだよ。警察官とか自衛官のOBがやってたりするから腕も確かだし」
「そうなんです…か」
「まーでも1人につき50万円とか掛かるけど」
「そんなに…年間ですよね?」
「まさか。ひと月でだよ」
「…っ!?」
「大丈夫だって。あたしゃそんなに取らないから。ただ、こういう打ち合わせの時はおごって欲しいのと、移動の足代くらいは欲しいけどね」
「も、もちろんです!」
 コーヒー一杯500円のオープンカフェである。

「…というワケです」
 留守番電話に残されていた聞くに堪えない音声の再生が終わった。
「こりゃヒドいね」
 ここは頼子の自宅の部屋である。
「…分かっちゃいたけど…これでも警察は動かないんだ…」
「そうなんです…やっぱり結局はお役人さんなんだなって」
「ま、あたしも一応公務員だから分かるけどさ」
「…二条さん公務員なんですか?」
「しまった…まあいいわ。公務員は副業禁止だから黙っといてね」
 といって口の前に人差し指を立てる。
「で?毎晩来るってことは今夜も来るんだよね?」
「多分あと1時間くらいで」

 どんどんどんどん!と扉を叩く音。
 玄関は施錠した上にチェーンも掛けている。合鍵を持っていても簡単には入れない状態だ。
「…」
 のぞき穴から玄関前の男を確認する。極端な広角レンズで歪んではいるが、さっき見せてもらった男に間違いなさそうだ。
 騒動は2時間は続いたが、今日も大人しく帰ったらしかった。

 目の前にはポテトチップスがパーティ開きになっており、紙コップに炭酸飲料がついである。まるで小学生のお泊りパーティだ。
「なるほどありゃ参っちゃうわね」
「そうなんです…」
「いきなりぶっ倒してもいいけど、なるべく効果的にやりたいわ」
「効果的…」
「今度電話来たら出て」
「え…でも」
「確かにストーカーの電話は余り取るべきじゃないわ」
 ポテトチップをバリバリ食べる美人。
「ドア前で掛けてドア越しに呼び出し音が連動して鳴ってるのを確認して部屋にいるのを確かめたりするし」
「…」
「固定電話なんてもっとそう。取ったら部屋にいることバレバレなんで直後に襲撃されたりしかねない」
「そんな…」
「さっき軽く調べたけど一応この部屋に盗聴器はついてないみたい」
「はい。入れたことはないので…」
「技術的には単なるワイヤレスマイクだからね。何か贈り物もらったことある?」
「あ…あります。貯金箱」
「それどした?」
「職場に置きっ放しです」
「怪しいね。何か仕込んであるかも」
「盗聴器ですか?」
「それだけならいいけど、隠しカメラとかGPSとか」
「そんな…」
「まーそんな話をしてもしょうがないわ。そいつの家に行ったことある?」
「…あります」
 気まずそうに俯く頼子。
「どしたのよ」
「ごめんなさい!迂闊(うかつ)でした」
「一人で行った訳じゃないでしょ?」
「…はい。職場の同僚と数人で」
「それ以来勘違いされてストーカーねえ」
「…はい」
 何かを思いついた風の珊瑚(さんご)。
「てーことはさ?」
「…?」
「ストーカーくんのヤサ(家)知ってるってことだよね?」

「ここかあ」
 こちらもセキュリティなど欠片(かけら)も無いマンションだ。
「…大丈夫でしょうか?」
「窮鼠猫を噛むってね。こっちから成敗してやるよ。さっき電話で言ってくれたでしょ?『あたしを諦めないつもりなら、何が起こっても知らないよ』ってね」
「言われた通りに言いましたけど…どういうことなんです?」
「まーみてなって」

 すっかり深夜である。
 頼子が送り付けられた合鍵を使って部屋に侵入する。
 現代人は夜更かしが多いのだが、ストーカー君はすっかり爆睡中らしい。
「おーよく寝とるわあ」
「…おじゃま…します」
 こんな時も丁寧な頼子。
「以外に普通の部屋だね。あんたの写真が壁中にびっしり…とかだったらどうしようかと思ったわ」
「…今も他の人も普通に呼んでるんだと思います」
 確かに、いつでも「部屋飲み」に誘える程度には片付いている。
「さーてと」
 勝手に電気をぱちぱち点灯させてずんずん進んでいく珊瑚(さんご)。
「あの…」
「頼子ちゃ~ん、寝室どっちかなあ」
 ほどなく到着した。
 ふっかふかの布団に埋もれる様にして中肉中背の男が眠りこけている。
「こいつだよね?」
「…はい。…あの…もしかして…」
「別に殺したりしないよ。ただちょっと「お仕置き」をね。いたいけな乙女をストーカー被害で悩ました男としちゃさ」
 珊瑚(さんご)はむにゃむにゃ言い始めたストーカーの顔に向かって何やらスプレーを吹きかけた。
「っ!?」
「ただのクロロホルムだよ。これで少なくとも明け方までは目は覚まさないから」
「…はあ」
「じゃ、行くよ」
 頼子は信じられない物をみた。
 ごく普通の中肉中背男の胸板が、ツンと上を向いた形のいい乳房となって行く。
 メリハリのないずん胴が縊(くび)れていき、がに股が内股となり、艶(なまめ)かしい脚線美が形成されていった。
 閉じていても分かる瞳がくりっと大きくなり、長いまつ毛に彩られて行く。
 はっとするほどの美少女だ。いや、「美女」か。
「…これは…」
「お仕置きだべ~」
 珊瑚(さんご)がふざけている間にも変化は続く。
 ぶつぶつと突き出していた無精ひげも鬱陶しかった顔が大理石みたいにつるつるの表面へと変わっていた。
 股間のでっぱりも平らになって行き、そこには別のものがあった。
「年齢設定が難しいなあ…二十歳よりは年上で女の色気が出ないと」
「あの…」
 だらしなく首回りが伸びたTシャツが純白の光沢を伴って大きく広がり、肩の部分がシュークリームみたいに皺(しわ)と光沢を伴って膨らんだ。同時に長袖に伸び、腕全体を覆っていき、手の甲にまでシームレス(継ぎ目なし)に達する。
「…すごい…」
 形のいい乳房を強調するかの様に豪奢な刺繍が表面を彩って行き、くびれたウェストに誂(あつら)えたかの様に立体的に成形される。
 そして…下半身をだらしなく覆っていたゆるいトランクスは美しく光沢を放つサテン生地と、ガサガサと音を立てて膨らむチュールとそれを肌に直接当たらない様にガードするシルクのスリップ状のガードが形成されたのだ。
 はっきり言えばお姫様みたいなゴージャスなドレスのスカートとなって流れ落ちたのである!
「…綺麗…」
 閉じたままの目に付けまつ毛が乗り、薄すぎず濃すぎないナチュラル・メイクがほどこされて行く。
 元々美形なのに丹念に施されたメイクによってお人形さん…いや妖精の様な透明感のある美女が溢れんばかりの大量の生地のドレスに身を包んですやすやと寝息を立てていた。
「ん…」
 とかいって軽く寝返りを打とうとするが大量の生地が邪魔をして中々自由に動けない。諦めたのかすぐ落ち着く。
「眠れる森の美女、スリーピング・ビューティの出来上がり~」
 何の変哲もない男の一人暮らしの部屋のど真ん中に突如出現した“お姫様”は違和感があるなんてものじゃなかった。
 よくよく見るとスカートから先端が飛び出した脚にはハイヒールが装着されている。この分だと補正下着やストッキングなども抜かりが無さそうだ。
「…どうなってるんです?これ」
「秘密ね。秘密」
 パチッとウィンクする珊瑚(さんご)。
「これで明日の朝起きたらビックリでしょ」
 それどころでは無かろう。
「この部屋って鏡は洗面所のしかないのか…自分で自分の格好を確認させてやれないのは残念だけど、まあそこまでサービスしてやることもないでしょ。王子様のキスで目が覚める仕込みまで出来れば完璧だけど…まーいーや。じゃ、帰ろうか」

 そんなこんなであたしたちは手際よくその後ストーカー君の部屋を脱出した。
 証拠を残すのはスマートじゃなかったけど、その場に置かれていたストーカー君のスマホにスパイウェアを仕込んで遠隔操作し、どうにか音だけは拾うことに成功したの。
 いや~面白かった。
 お馴染みの「ん?」から始まって「うわあああー!」とか「ひゃああーっ!」とか「何だこれはぁあ!?」とか延々続く訳よ。女二人で大爆笑しちゃったわ。
 そりゃごく普通の若い男がある朝起きたら女に性転換していた上にお姫様みたいなドレス着せられてたんだから驚くわなあ。
 その後どうなったのか知らないけど、ともかく結果としてストーカー被害はぴたりと止んだらしいんで結果オーライってことで。

 それじゃ!


おわり

http://ncode.syosetu.com/s3754c/

 

珊瑚(さんご)さんの世直し 08 「間に合わせ」

 投稿者:真城 悠  投稿日:2015年10月20日(火)19時05分21秒
返信・引用
  「いらっしゃ~い」

 ダルそうに珊瑚(さんご)が言った。
 煙草を止めていなければうっすらくゆらせてたところだ。

 ここはマンションの一室だ。
 悪徳ホストである色男が部屋に帰ってみると、貢がせていた若い女ではなく、すらりとしたモデル体型の美人ではあるが若干トウの立った女がふんぞり返っていた。
 ジャケットから出た両手に手袋をしているのが独特の雰囲気だ。

「…あんだお前は?」
「あんたの彼女のお友達だよ」
「知らねえよ」

 珊瑚(さんご)はゆっくりと立ち上がった。

「ま、知らんでもいいけどさ…とにかく彼女は実家に帰ってもらうから」
「あんだとゴルァ!」

 急に重低音の効いた大声を上げる色男。

「おーきな声だこと」

 だが、スリム美女は特に同じている風でもない。

「人の恋路に口は挟まないけどさ。何かというと殴ったり金を貢がせたりするのは良くないなあ」
「あぁ?テメエの知ったことかよ!」
「知ったことだよ!」

 負けずにタンカを切る珊瑚(さんご)。

「…ということで今日から彼女のことはバッサリ忘れな」
「何なんだよオメエは!」
「そりゃ決まってんでしょうが」

 軽く髪を掻きあげる。

「正義の味方だよ」

 それと同時だった。

「うるせえ!」

 ケンカ慣れしていない素人パンチそのものだった。右手を振り上げて力任せに身体ごと叩きつけてくる。

「…っ!?」

 拳ではなくてしなる腕の方を払う様に防御し、同時に脚を上げてキックをカットする体制になりつつ反対の手をつき出す。
 これは本来はフェイントを掛けて金的を狙ってくる相手用…つまりは男性がやる防御なのだが、珊瑚(さんご)のコーチも男性だったので反射的に出てしまった。

 ファーストコンタクトの後、突き飛ばす様にして距離を取る珊瑚(さんご)。

「あーそれから言うの忘れてたけど」

 正中線を守る様に構え直す。タイトスカートが動きにくそうだ。

「あたしにゃ触らん様に…って遅いか」

 ジト目になる珊瑚(さんご)。

「あんだこの野郎!…っ!?」

 その甲高い声が誰のものなのか分からずうろたえる色男。…いや、今は色男ではない。

「え…、な!何だぁ!?」
「だから言ったでしょうが。触るなって」
「あ…あ…ああ…」

 茫然と自らの身体を見下ろしている元・色男。
 だが、金髪に染めて逆立てていたその髪の毛も、筋肉質に引き締まったボディも、金の掛かった派手な色のスーツも跡形もなくなっていた。

「え?…あ…ああ!?」

 ぐらぐらと安定しない黒光りするハイヒール。艶(なまめ)かしい脚線美を覆い尽くす網タイツ。メリハリの効いたダイナマイトバディを抱きしめる黒い光沢を放つハイレグ。胸から上は素肌が露出し、瑞々しい輝きを放っている。
 半分もカバーされていない様に見える乳房からは胸の谷間の黒い影が見えそうだった。
 毒々しいほど真紅のマニキュアに10本の指が彩られ、カラスの様に漆黒の髪は腰まで伸びて首筋から背中の素肌をくすぐった。
 石油製品の香りすらしそうな原色のルージュとアイシャドウに彩られた彫の深い美人顔にシャンデリアの装飾を思わせる大振りのイヤリングがぶら下がる。
 天井まで達しそうなうさみみを模した髪飾り…バニーカチューシャが突き出していた。
 つんと上を向いた豊かなヒップの上にしっぽを模した飾りが乗っかっている。

「バカな!?…どうなってんだぁ!?何なんだよ…これはぁ…」

 くわっと目を見開いているバニーガール。
 そう、色男は一瞬にして妖艶なバニーガールに変貌してしまったのだ!

「何なんだよって…あんたバニーガールも知らんの?」

 そういう問題ではない。

「そんな…オレの身体が…お、女に…」

 改めて胸の谷間を見下ろし、その先の網タイツに包まれた脚線美を見下ろし、それを動かしては自分の身体の感触を確かめている元・色男。

「わーった?金輪際彼女には近づかないこと!」

 突然バニーガールが飛び掛からんばかりに珊瑚(さんご)に迫ってきた。

「あ、あんたか?あんたがこれをやったのか?」

 予想外の反応にドギマギしてしまう珊瑚(さんご)。

「まー…一応」

 ぶっちゃけこの能力は非公式なのである。華代だけでも厄介なのにこの上妙な能力持ちが増えたのでは予算が取れない。
 まあ、一切の説得が不可能な華代と違って珊瑚(さんご)は基本的には真面目なエージェントなので問題はない。

「も、戻してくれ!今すぐ戻してくれよお!」

 完全な女声なのにチンピラみたいな口調なのが異様だ。まあ、珊瑚(さんご)はこれまでも散々「女の見た目に男の挙動」と言う存在を量産して来たので慣れたものだが。

「だーめ。ホステスの格好してホステスの彼女に貢がせてた反省するんだね」
「分かった!それは分かったからまた今度にしてくれ!頼む!頼むよおぉ!」

 子泣きジジイみたいにへばりついてくるバニーガール。濃い化粧の香りが鼻に付く。
 半分露出した胸を硬い骨組ごしに押し付けてくる形になる。スケベ男なら極楽かもしれないけど、生憎(あいにく)こちらは女の身体なんぞ自分ので間に合ってるんでね!

「ひっつくな!痩せた女は体温が熱いんだよ!」

 引き剥がすように突き飛ばす。

「きゃっ!」

 慣れぬハイヒールに怪我をしない様に転ぶのがやっとのバニーガール。
 揃えられた脚が思わずよよとした女性的ポーズになってしまう。

「うぁあっ!…痛い…」
「うるさいよ!散々女を食い物にしやがって!ちったあ反省しな!」

 決まった…。珊瑚(さんご)はこういう風にちゃんと能力を使って当然の相手に使った場合は敢えて「しばらく放っておけば元に戻る」ことを教えないことにしていた。
 次の瞬間、乱暴にドアが開いた。

「おい!引き取りに来たぞ!」

 ビア樽みたいに太り散らかした口髭の男と、サングラスにダークスーツのマッチョというガラの良くない二人組が遠慮なくずかずか入ってきた。

「女はどこだよ女は!タカ!」

 どうやらビア樽の方が主導権を握っているらしい。
 そして、「タカ」というのがあの色男…現・バニーガール…の通称らしかった。

「お、何だよこんなところにいるじゃねえか」

 バッチリ着付けられ、メイクも決まったバニーガールがセクシーポーズでお出迎えしているのである。目立たない訳がない。

「いや…違う…違うんです…」

 脚がすくんで立ち上がれないらしいバニーガールが必死に首を振り、両手を左右に振って否定している。

「そんなカッコで何気取ってやがる。タカの女ってのはお前か?」
「ち、違います!オレがタカです!」

 セクシーバニーガールが甲高い声で言い放った。
 一瞬顔を見合わせる闖入者たち。

「…オレの知ってるタカは男だぞ」
「だ、だからオレがタカなんですって!」
「お前…どう見ても女だろうが」

 他のスタイルならいざ知らず、体型がモロに出るバニーガール姿に男性が女性に見分けがつかないほどコスプレで化けることなど不可能だろう。
 しかも目の前のうさぎちゃんは細いところは細く引き締まったプロポーション抜群と来ている。
 元の身体より小さく仮装など出来る訳がない。

「こいつです!このババアが俺を女にしやがったんですよ!」

 珊瑚(さんご)の方を指さしてきた。

「…そうなのか?」

 無言で肩をすくめるアメリカンなジェスチャーをする珊瑚(さんご)。「んなワケないでしょ?」という訳だ。

「まあ、どっちでもいいや。いい女が調達出来りゃさあ」

 にやりとするビア樽。

「いや…止めて…やめてぇっ!!!」

 あっという間にサングラスの大男に「お姫様抱っこ」されるバニーガール。
 お尻の方がモロに見せつけられる恰好となり、脚の真裏を上下に走る「バックシーム」が珊瑚(さんご)の目に飛び込んでくる。
 じたばたする網タイツに包まれた脚のラインにハイヒール…まるでフェチの記号集だ。自分でやらかしたこととはいえ、女の目で見てもドキッとするほどセクシーだ。

「あ、あいつ!あいつだって女です!あいつを連れてってくださいよお!」

 涙目で主張するお姫様抱っこされたバニーガール。
 一目見てすぐに視線を戻すビア樽。

「ババアにゃ興味ねえよ。お前でいい。きっとボスも気に入るぜ」
「そ、そんな…いやああああっ!」

 生まれたばかりのバニーガールはそのほお紅を打ち消すほど真っ青な顔色になっていた。


 …そんなこんなで連れてかれた元・色男君がどうなったのかは知らない。
 部屋の奥に隠れててもらった知り合いの女の子の話だと、あれから二度と顔を出してないんだって。あたしの脅しとお仕置きが効いたかな?

 連れてかれたバニーちゃんなんだけど…あれ、放っとけば男に戻れるからね。でも、勝手に服を着替えられるとそれには対応できないから注意が必要。
 まさかとは思うけど、キャバ嬢ドレスみたいなのに着替えさせられてボスにお酌してる真っ最中に戻ったりしたら…そこには中途半端な女装した男が…ってなことになるけど大丈夫かしら。

 ま、その時は連れてきた連中ともどもボスの方にお仕置きされちゃうかもしれないけど知ったこっちゃないね。

 それじゃ!


おわり

http://ncode.syosetu.com/s3754c/

 

書き込みありがとうございます(^^

 投稿者:真城 悠  投稿日:2015年10月18日(日)06時21分0秒
返信・引用
  ご無沙汰しております。

>どうも、てぃーえむです。
>復活されたようでなによりです。

 ご心配おかけいたしました。
 てぃーえむさんには数々の不義理、申し訳ございませんでした。

>早速、珊瑚さんシリーズを読ませていただきましたが、相変わらずな感じで、面白いやら懐かしいやら。華代ちゃんシリーズを読みあさってた頃を思い出しました。

 「相変わらず」というのは私にとって最大のほめ言葉の一つです(^^。ありがとうございます。
 このワンパターンな感じが書いてて好きです。

 「基本的には戻れる」ってのは私の作品では制裁としてぬるいんですが、バスの順番待ちのケンカ程度で永遠に性転換されちゃうのは逆に重すぎるんで、もっと軽い制裁でいい場合に珊瑚の能力が丁度いいかなと。

>「なろう」のほうでも活動されているのも確認しましたし、折を見て作品を読みたいと思います。

 ありがとうございます。
 自分で言うのもなんですが、「メタモル・ファイト!」は楽しんでいただけると思います。
 読み味が軽くなるように1チャプターを物凄く短くしてありますのでどうぞ。

 それから「恐怖の女体化劇場」はまんま「不条理劇場」のノリでとても短いのでお気軽に読んでいただけると思います。

「恐怖の女体化劇場」
http://ncode.syosetu.com/s5306c/

>さて、「なろう」におけるTS作品についての話題が出ておりますね。
>私としては「なろう」で流行ってるTS作品はいわば「俺が変身ヒーロー(ヒロイン)になって大活躍で大勝利」的なもんだと思います。(ついでに異世界転生ものが流行ってるのも同じ理由だと思う)

 少し前に八重洲さんもおっしゃっていたのですが、この頃のTSものって、「女の子になる」ことが一方的なプラス属性の付与になっちゃってる…という点ですね。
 私の考えが古いのかもしれませんが「何かを得るためには何かを失う」「何らかの犠牲を伴う」ものであるべきだと思います。であるからこそいいわけで。

 分かりやすく言えば、「女になる」にはその前提として「男でなくなる」ということがあるわけです。

 いきなり腐れ縁の男に押し倒されそうになる「原生動物」ほど直接的にデメリットを叩きつけるかどうかは作者の好みになりますけど、基本的には「被害者」の立場を楽しむフィクションジャンルだと思っていたわけです。
 ところがこの頃のTS(?)ものは「俺TUEE」です。

 本田透氏も指摘されていたんですが、「女の子になると同時に肉体的にも強くなる」現象が顕著です。「少年魔法少女もの」が顕著ですね。
 これは「女の子になると“弱くなる”」ことを疑似体験的に楽しんでいた、“古きよき”時代のTSファンからはかなり違和感があります。
 まあ、完全に違うジャンルだと思うしかありません。

 「異世界転生」も、そもそもこの頃の「異世界」がファンタジー世界で現代の天文学の知識から「日食」の来る日を予測し、それを「超常現象」として演出することで大衆の心を操作する…みたいなハードファンタジーじゃないんですよね。

 私も数を読んだわけではないので伝聞ですが、「ゲーム内世界」への転生らしいんですよ。下手すりゃすべてにパラメータが表示されるくらいの。
 何というか箱庭世界みたい。もう完全に妄想の世界です。まあ、フィクションに耽溺するのは人間の最高の娯楽なんでいいんですけど、不自由な楽しさってのもあるのに妄想の中とはいえそこまで自由でいいのかな?といらん心配をしてしまいそうです。
 個人的にはMMORPG的な自由にもほどがある世界観がある程度以上続いて飽きられたら伝統的な流れに回帰するんではないかと勝手に踏んでいるのですが。

 一ついえるのは私は「TS+俺TUEE」は好きじゃないってことです。

 え?「メタモル・ファイト!」はどうなのかって?
 あれは「女の子に変身して戦う」ものではありません。

 「相手を性転換+女装させる」能力をぶつけ合う戦いなんです。
 だから勝つ側は「性転換+女装」はしません。つねに「性転換+女装」させられるのは常に負ける側なんです。
 とはいえ、「勝敗」は別のところでつきますから、「能力の相打ち」になることもあります。

 つまり、男同士で戦いが始まったのに途中から女同士のキャットファイトっぽくなっちゃうこともあるんですね。戦闘能力はそりゃありますが、基本的に「性転換した」ことによる能力付与要素は皆無。デメリットしかありません。

 「そういう風に戦いに性転換+女装を使う」という、おそらくは「なろう」では唯一無二の作品です。あんまり自慢になってませんが(爆)。

例)
「相撲決着」(足の裏以外が地面に接触したら負け)を提唱

→戦闘中に相手を「タイトスカート+ハイヒール」姿(転びやすい格好)にして転ばせて勝利!

>これは「なろう」に限った話ではなく、きっとどこでもそうなのでしょう。『「なろう」はTS作品を探す場所ではない』ではなく『どの方を向こうと、そもそもコアなTS作品を書く人が少ない』のです。コアなTSファンというのは今でもさほど多くなく、執筆できる人はさらに少ないということです。ゆえに、真城さんのようなTSファンが「なろう」で作品を投稿する意味は確かにあるのだと思います。

 ありがとうございます。
 先日別の新人賞の落選通知が来ました。結果自体は一次選考落選であることは知っていたんですが、「これはこの頃売れている傾向で無いから」ではまったく新しいブームは作れないのになあ・・・と思ったり。

>実際、先んじて「なろう」の感想欄だけ見てみましたが、感想を書く人がいらっしゃるではありませんか。しかも少しずつではありますが、感想を書く人が増えている。これはコアなTSファンが少数かもしれませんが「なろう」に存在し、彼らが真城さんの作品に価値を見いだしている明確な証拠ですね。
 というわけで、これからも活動を続けてほしいと思います。

 ありがとうございます。
 確かに若干はリアクションを頂いております。信じられないほど大量に活動されている(回数および総文章量)のに、感想が皆無の作品などもありますから、その点はありがたいです。

 とはいえ、「もしも子供のころの自分だったら、こんなアホ(いい意味で)な小説があったら大騒ぎする」内容にできているので、その割には・・・とどうしても思ってしまうんですよね。

 まあ、現在ちょっと詰まっているのは最新部分で出てくる新キャラの能力・・・というかコスチュームが思いつかないので停滞しているだけで、もうしばらくしたら再開します。

 書き込みありがとうございました!

http://ncode.syosetu.com/s3754c/

 

どうもです

 投稿者:てぃーえむ  投稿日:2015年10月16日(金)22時53分12秒
返信・引用
   どうも、てぃーえむです。
 復活されたようでなによりです。
 早速、珊瑚さんシリーズを読ませていただきましたが、相変わらずな感じで、面白いやら懐かしいやら。華代ちゃんシリーズを読みあさってた頃を思い出しました。
 「なろう」のほうでも活動されているのも確認しましたし、折を見て作品を読みたいと思います。


 さて、「なろう」におけるTS作品についての話題が出ておりますね。
 私としては「なろう」で流行ってるTS作品はいわば「俺が変身ヒーロー(ヒロイン)になって大活躍で大勝利」的なもんだと思います。(ついでに異世界転生ものが流行ってるのも同じ理由だと思う)これは「なろう」に限った話ではなく、きっとどこでもそうなのでしょう。『「なろう」はTS作品を探す場所ではない』ではなく『どの方を向こうと、そもそもコアなTS作品を書く人が少ない』のです。コアなTSファンというのは今でもさほど多くなく、執筆できる人はさらに少ないということです。ゆえに、真城さんのようなTSファンが「なろう」で作品を投稿する意味は確かにあるのだと思います。
 実際、先んじて「なろう」の感想欄だけ見てみましたが、感想を書く人がいらっしゃるではありませんか。しかも少しずつではありますが、感想を書く人が増えている。これはコアなTSファンが少数かもしれませんが「なろう」に存在し、彼らが真城さんの作品に価値を見いだしている明確な証拠ですね。
 というわけで、これからも活動を続けてほしいと思います。

 とまあ、今回はこんなところで。それではまた。
 

レス20151014

 投稿者:真城 悠  投稿日:2015年10月14日(水)19時14分4秒
返信・引用
  >お久しぶりです。以前、StarDreamというHNで投稿していた星龍アストルです。

 ご無沙汰しております。StarDreamさんのお名前覚えておりますよ。

>私は実はTS自体のファンではありません。
>私はTSを含めた『変身・変化物』のファンです。

 これは意外なお言葉。

>なので、入れ替わりや憑依は苦手で、それよりもTF(transfur)や異形変身系、魔物化や状態変化物の方が好きなのです。
>しかし、異形変身系や魔物化は私の好みとなる作品が少ないのです。
>なにせ私は変身・変化する過程や変化後のギャップに戸惑う様子が見たいのにそれらのジャンルは悪墜ちが多いからです。

 なるほどなるほど。「状況変化」ファンでいらしたのですね。
 結局のところ私もそうだったんですよ。「性転換」「変身」「女体化」ものが好きだと言っても、要するに「ムクムク系」でないと響かなくて。
 かといって「吐きだめの悪魔」とか「AKIRA」とかでは強烈過ぎるんで、「原生動物」は正に理想だった訳です。

 前にもどこかで書いたのですが、「異形変身」ファンなら風祭玲さんのホームページがオススメです。
 私は「異形変身」はキツ過ぎるので「痛し痒し」が味わえる「女の身体にされる!」くらいが丁度良かったんですけど、この頃の「可愛いもの至上主義」の作品群はそうした要素が無いんですよ。

 ある時風祭さんのホームページで毒虫か何かに変化していく人の小説を読んで背筋がゾワッとする感覚をかなり久しぶりに味わいまして「あ、自分がTSに求めてた感覚ってこんな感じだったっけ」と思い出しました。
 とはいえ私は毒虫よりも可愛い女の子とか、面堂みたいなセクシー美女の方がいいですが(爆)。

 ともあれネタバレになるので言えませんけど「まさかこんな物に変えられてしまうとは!」と衝撃を受ける短編がずらりですよ。

>悪墜ち系は変化完了後に人格が変化して終了の場合が多いのに対して私は変化後のギャップに戸惑う様子や徐々に精神が変わる様子が見たいのです。
>なのでTSやTFがメインになってくるのですが、例によってTSも私が真に求める物は少ない気がします。

 「悪堕ち」と一緒に出来るかどうか分かりませんけど、私は「男の娘」は人格的に女の子にしか感じられません。ギャップは少ないですよね。ギャップが一番なのに。

 それこそ逞(たくま)しい格闘家とか、ロマンスグレーの渋いおじさまとか、「絶対に美少女化なんてしそうにない」存在をこそしてナンボでしょう。

 「徐々に精神が悪堕ち」する作品は知らないのですが、「じわじわと精神が女性化してしまう」と言う作品ならば初期の少年少女文庫には割とあった気がします。直(すぐ)に作品名までは思い浮かばないですが。

>私は『ムクムクと身体や衣服が変化する様子』が見たいのにそれが少ないのです。

 「メタモル・ファイト!」はそればっかりですので…オススメしておきます(宣伝)。主人公たちすらその犠牲になりまくりますので。

>特に『なろう』ではTSらしいTSは本当に少ないです。

 え?そうだったんですか…。

>私はなろうでそういった作品を探すこと自体が間違っていることに気が付きました。最近はなろうのTS作品はTSではないという認識で読んでいます。
>なにせ『これ、TSする必要ないよね』という作品が多いのです。

 異世界異性転生ものは実は読んでないんですけどそうだったんですか…。

>その上に、なろうの恋愛を扱うTS作品の多くにBLやGLのタグや注意書きがあるのです。
>普通の一般的なTS娘と男の恋愛物にBLの注意をのせるのが当たり前になっているのですが、私は?って思ってしまう訳です。BLメインに扱う作品ならともかく、そうでない作品にまでBL扱いはどうか?と思うわけです。

 まあ、傾向として精神的には男同士な訳ですし、元は「女体化」もBL用語だったとも言われているそうなのでそれ自体はいいんですけどね。
 ちなみに「やおい」ものの同人誌には強制女装とか女体化を含む二次創作が結構な割合で含まれていたので、コミケではそうした作品をかなり買ってました。
 外れも少なくありませんでしたが、「TSとして」質の高い作品もありましたよ。

 …それにしても女性作家の方ってTS娘への鬼畜扱いが遠慮ないんで驚きましたが。

>なのでなろうでTSメインの作品を掲載しても、それをメインにしてる人たちはあまり来ないと思います。

 であるからこそ存在意義はあるかな?とか思ってたんですがねえ…。イラストが全くないのも辛いところです。
 といっても「TSに理解のある」というか「被虐TSの感覚を共有してくれる」絵師さんなんてこの宇宙に余りいらっしゃらないでしょう。

>私が求めるTS作品はなろうにはほぼ存在していないので、もっぱらPixivで作品を探しています。
>長くなりましたが、『なろう』は真城さんの求めるような作品はもちろん、一般的なTS作品を探したり掲載するのには向かない場所だと思います。多分そういった作品を求める人はそもそもなろうには期待していないのだと思います。もしかたら、真城さんの嗜好と同じ人がいてもなろうは見ていないから気づいていないのかも知れません。

 なるほどなるほど。
 現在掲載している「珊瑚(さんご)さんの世直し」シリーズは「なろう」で一般小説にも挑戦した経験が活かされた「ハンター」シリーズの作風からもちょっとはみ出したそれではありますが、ムクムク系好きの嗜好を目一杯ぶち込んだそれです。
 自分のホームページでありながら不義理していた期間が長かったこともあってまだ無反応ですが、発信することそのものは止める気はないので根気強く続ける積りです。

 それにしても「なろう」の「異世界異性転生」の隆盛は何なんでしょうね。

>R-18OKならPixivは割りといい作品が多いかもしれないです。

 ピクシブって小説も掲載されてるんですか?探してみようかな。

>いつか真城さんの好みに合う新しい作品や同じような嗜好の人に出会えることといいですね。

 何よりのお言葉。感謝です。
 これからも気が向いたら覗いてやってください。

http://ncode.syosetu.com/s3754c/

 

お久しぶりです

 投稿者:星龍アストル@HN変えました  投稿日:2015年10月14日(水)16時23分8秒
返信・引用
  お久しぶりです。以前、StarDreamというHNで投稿していた星龍アストルです。

真城さんのTS作品への嗜好についての書き込みを見て私も思っていた事があるので書き込みます。

私は実はTS自体のファンではありません。
私はTSを含めた『変身・変化物』のファンです。
なので、入れ替わりや憑依は苦手で、それよりもTF(transfur)や異形変身系、魔物化や状態変化物の方が好きなのです。
しかし、異形変身系や魔物化は私の好みとなる作品が少ないのです。
なにせ私は変身・変化する過程や変化後のギャップに戸惑う様子が見たいのにそれらのジャンルは悪墜ちが多いからです。
悪墜ち系は変化完了後に人格が変化して終了の場合が多いのに対して私は変化後のギャップに戸惑う様子や徐々に精神が変わる様子が見たいのです。
なのでTSやTFがメインになってくるのですが、例によってTSも私が真に求める物は少ない気がします。
私は『ムクムクと身体や衣服が変化する様子』が見たいのにそれが少ないのです。
特に『なろう』ではTSらしいTSは本当に少ないです。
私はなろうでそういった作品を探すこと自体が間違っていることに気が付きました。最近はなろうのTS作品はTSではないという認識で読んでいます。
なにせ『これ、TSする必要ないよね』という作品が多い
のです。
その上に、なろうの恋愛を扱うTS作品の多くにBLやGLのタグや注意書きがあるのです。
普通の一般的なTS娘と男の恋愛物にBLの注意をのせるのが当たり前になっているのですが、私は?って思ってしまう訳です。BLメインに扱う作品ならともかく、そうでない作品にまでBL扱いはどうか?と思うわけです。
なのでなろうでTSメインの作品を掲載しても、それをメインにしてる人たちはあまり来ないと思います。

私が求めるTS作品はなろうにはほぼ存在していないので、もっぱらPixivで作品を探しています。

長くなりましたが、『なろう』は真城さんの求めるような作品はもちろん、一般的なTS作品を探したり掲載するのには向かない場所だと思います。多分そういった作品を求める人はそもそもなろうには期待していないのだと思います。もしかたら、真城さんの嗜好と同じ人がいてもなろうは見ていないから気づいていないのかも知れません。
R-18OKならPixivは割りといい作品が多いかもしれないです。
いつか真城さんの好みに合う新しい作品や同じような嗜好の人に出会えることといいですね。
 

珊瑚(さんご)さんの世直し 07 「ややこしい」

 投稿者:真城 悠  投稿日:2015年10月14日(水)14時45分29秒
返信・引用
   珊瑚(さんご)は電車には乗らない。
 新幹線やグリーン車の様に座席が区切られているタイプならいざ知らず、芋を洗うような通勤電車などにはまず乗らない。
 理由は言うまでもない。
 珊瑚(さんご)には特殊能力がある。
 男に触れるとその男を一時的に女への性転換&女装状態にしてしまうのだ。
 馬鹿馬鹿しいが本当の話である。
 衣装は選ばず自由自在。概念さえ知っていれば細部のディティールも再現してくれる。何とも便利で融通無碍だ。
 問題は意識していなくても“勝手に”発動してしまうことで、これによって珊瑚(さんご)は異性とまともに関わり合うことが出来ない体質になってしまった。
 …が、現在は珊瑚(さんご)の能力を受け付けない体質を持つパートナーに巡り合っている。

「…」
 ガラガラに空いた車内でそのうさんくさい男はキュートな制服に身を包んだショートカットの女の子に身体を密着させていた。
 …どう考えても不自然すぎるだろあんなの。
 見ると女の子は泣きそうになって身体を逃がそうとするが、ドア際のコーナーに押し付けられる様に回り込まれて逃がしてもらえない。
 この頃の女の子はたくましくなって来たなんてことも言うが、体格に勝る男に覆いかぶさられたら恐怖で声も上げられなくなるのは想像が付く。

 珊瑚(さんご)はその男を値踏みした。
 デカいカバンにビジネススーツ。いかにも真面目で硬そうな男だ。むっつりスケベだが。
 こいつは厄介だ。
 それこそ痴漢容疑なんぞ掛けた日には逆に名誉棄損で訴えるとかなんとか言いだしそうじゃないか。
 痴漢疑惑なんぞ、何の証拠も無くても逮捕される危険行為ではあるが、そんなもの口八丁でどうにかなる奴もいるのだ。
 珊瑚(さんご)は女性にしては恵まれた体格で仕事上習わされた格闘技の覚えもあることはあるが、この逞(たくま)しいのと真正面から殴り合って勝てるかどうかは微妙なところだ。
 勝っても負けてもいきなり突っ掛ったこちらを正当化できるかどうか。
 痴漢行為を客観的に立証するのはそれほど簡単じゃない。

 珊瑚(さんご)はさりげなく右手の手袋を取った。

「ん~ふふ~んふ~」

 適当な鼻歌を口ずさみながら男女が密着するそのそばを通り過ぎる。
 女の子の縋(すが)る様な目があった。

「!」

 珊瑚(さんご)は男に気付かれない様にさりげなく女の子と目を合わせてウィンクした。
 とん!と男の背中を軽くたたく。
 そしてそのまま隣の車両へと歩いていく。

「…ん?…うわああああああ~っ!」

 素っ頓狂な悲鳴が聞こえてきた。
 その野太い悲鳴は途中から可愛らしい高音へと変化する。
 そりゃそうだ。
 いま正に痴漢行為まがいを働いている可愛らしい女子高生ちゃんと同じ年齢層の女の子にしてやった挙句にお揃いの制服を着せてやったんだから。そりゃ驚くでしょ。

 隣の車両から覗き見てみたけど、茫然と立ち尽くすJKちゃんの隣を泣きながら走り抜けていく被害者の女の子。
 こちらから見て奥の方の車両に向かって行ったのでどうなったのかは分からないが…まあ、目の前の痴漢被害からは逃れられたってことで。

 魂が抜かれたみたいに立ち尽くすJKちゃん…元・痴漢男…を尻目に電車は止まり、それほど多くない乗客がちらほらと流れ込んできた。
 問題はその中にいかにもいやらしそうな目つきで生まれたてのJKちゃんのむき出しのふとももを眺める男がいたことだ…。


 あの後あの痴漢男がどうなったのか知らんけど、特に事件として騒がれたって話も無いし、まあどうにかなってんじゃないかな。
 この方法がいいところは、間違いなく被害者ちゃんを助けることが出来るってことと、万が一冤罪だったとしても警察に突き出して一生台無しにする危険性も無いってこと。一晩の性転換位なら我慢しなさいってね。

 それじゃ!


おわり

http://ncode.syosetu.com/s3754c/

 

珊瑚(さんご)さんの世直し 06 「ケンカ」

 投稿者:真城 悠  投稿日:2015年10月 9日(金)16時09分50秒
返信・引用
  「義を見てせざるは勇無きなり…か」

 珊瑚(さんご)はとある名言を思い出していた。
 というのも目の前で取っ組み合いが始まったからだ。

 二枚目イケメンの優男と、浅黒く日焼けしたマッチョである。あきらかにマッチョは柄が悪く、恵まれた体格を悪いことに使って周囲に迷惑を掛けているタイプだった。

 ここはとあるバス停の行列である。
 どんなきっかけなのか分からないが、突如大声を上げて取っ組み合いが始まった。
 周囲のお客は一歩引いてしまって止めに入ることが出来ていない。

 無理も無い。二人の男はまるでイノシシだった。ただでさえ体格がいいのに興奮しているともなるとちょっとやそっとでは止められない。周囲にいるのは主婦やお年寄りばかり。

 マッチョがイケメンの首を腕でロックしたまま引きずり回している。
 元々マッチョの方が強そうなのに絶対的に優位なポジションだ。
 イケメンも必死の抵抗を試みるが、いかんせん体重にすら差があり、仰向けに抑え込まれ、遂に馬乗りになられた。
 所謂(いわゆる)「マウントポジション」と言う奴だ。

 寝てから加激することが許される格闘技においては絶対的に有利な体制である。
 格闘技とは違うのはこれが路上のケンカであって、対戦相手が勝負があったから手加減してくれるかどうかなど分からないということだ。

「はいそこまで!」

 つかつか歩み寄った珊瑚(さんご)は大きな声を出した。
 一瞬視線を上げるマッチョ。
 だがすぐにパンチを振り上げる。

「やめなさいって言ってんでしょうが!」

 背の高いスカートスーツも決まっている珊瑚(さんご)はつかつか歩み寄ると、マッチョの上半身を突き飛ばした!…はずだった。
 ところが、石畳に足を取られて転んでしまう。

「うわわっ!」

 あろうことか倒れ込んだその先にはいま正に馬乗りにされているイケメン君の上半身があったのだ!
 必死にモロに激突したり顔面に手をついたりしてしまうことは避けたのだが、珊瑚(さんご)の顔の一部が接触してしまった!

「…!?ああ…あああああっ!」

 哀れなイケメンの身体に変化が始まった。
 わさわさと髪が伸び、薄い胸板には綺麗な乳房が盛り上がり、全身が皮下脂肪でふっくらと柔らかく覆われていく。

「何だ?…これ…」

 思わず立ち上がりそうになるマッチョ。

「そんな!?…か、からだが…おかし…い…」
「うわちゃー…」

 立ち上がって成り行きを見守るしか出来ない珊瑚(さんご)。よりによって被害者の方を女にしちゃうとは痛恨のミスだ。

 忽(たちま)ち何の特徴も無いシャツにジーンズは朱色も鮮やかで金色の装飾が入った「晴れ着」となってしまう。
 地面に大きく広がった「振袖」が嫁入り前の娘を象徴して鮮やかだ。
 同じく扇形に広がっていた黒く美しい髪はアップにまとまり、妖艶なうなじが露出する。元から女性的に整っていたその顔にナチュラルメイクがほどこされ、「和服美人」が完成していた。
 …マウントポジションの下敷きになる形で。

「な、何だよお前は!?」

 馬乗りになっていたマッチョがうろたえた。うろたえるに決まっている。
 だが、変わり身の早い煩悩男の本領を発揮するのに時間は掛からなかった。

「へへへ…何だか分からねえが…綺麗じゃねえか」
「はぁ!?」

 和服美女となった元・イケメンの顔色が青くなる。

「ぐへへへへへぇえ!」
「きゃあああああっ!」

 胸元に手を差し入れようとするマッチョ。

「調子に…乗るなよバカ!」

 今度こそ馬乗りマッチョを突き飛ばす珊瑚(さんご)。
 腰が浮きかけていたこともあってモロに尻もちをついてしまう。
 普通にどつき合いをやれば身長はともかく、体重で全く適わない珊瑚(さんご)など相手にならないだろう。体重の重さは殴り合いでは絶対的に不利だ。
 打ち出す砲台の重さが直接打撃力の差となる。単純な物理である。だから砲丸投げや円盤投げの選手はトドみたいに太り散らかしていた方がより遠くまで飛びやすい。
 ボクシングがあれほど細かく体重を分けるのは決して根拠が無いことではないのだ。
 取っ組み合いともなればそれ以上の差となる。

「て、テメエこのババアが!」
「うるさいよこの脳まで筋肉男が!…あ、もう男じゃないか」

 にやりとする珊瑚(さんご)。もう腕を組んで見下ろす体勢だ。

「テメエ!」

 立ち上がろうとするマッチョ…だったが、直(すぐ)に身体の違和感に気付く。

「??…テメエ…何を…し…やがった…」
「あんたみたいに気に入らないことがあるとすぐに暴れ出すバカへのお仕置きだよ」

 身体がみるみる細くしぼんで行く。同時に岩みたいな大胸筋がツンと上を向いた形のいい乳房となって残って行く。

「あああああっ!!?」
「どうせあんた今まで女泣かせてきたんでしょ?思い知るといいわ」

 勝手な決めつけである。
 そうこう言っている内にも髪の毛は生き物の様にさわさわと波打ち、そして伸びていく。
 周囲から「きゃー!」なんて悲鳴も上がる。
 筋肉質にずん胴だった胴回りも、薄い皮下脂肪に覆われただけの細いウェストとなり、ヒップは丸く豊満に膨らんでいく。

「俺の…からだ…がぁ!」
「性転換したくらいでガタガタ騒ぐんじゃないよ」

 そりゃ騒ぐだろ。
 ガニ股だった脚がぐぐぐ…と内側に曲がって行き、張りつめたズボンの上からでも分かる艶(なまめ)かしい脚線美が形成されて行く。

「よせ…やめろぉおっ!」

 その声は完全に鈴が鳴る様な高音の可愛らしいそれとなっていた。
 男性のシンボルがしゅしゅしゅ…と体内に収納されて行く。

「しばらく暴れてもらうと困るんでね…」
「ぐあ…あああっ!」

 同じく髪がアップスタイルにまとまっていく。おでこを丸出しにするヘアスタイルは美女ぶりが残酷なほど出てしまうのだが、彼…いや、彼女は十分合格点であるようだ。
 全身にダブダブに引っかかっていた衣類は白く染まり、白塗りがほどこされていく。

「あ…あ…」

 頭上に綿帽子が載せられ、全身が白く染まり切った。
 それは「白無垢」…和風の花嫁衣装であった。

「そんな…これは…」
「余り思いつかなかったんで悪いね。目一杯動きにくい恰好って言ったらこれかなってさ」

 綺麗な振袖を石畳にこすりながら晴れ着の娘…元・イケメン…がやっとこさ立ちあがった。
 もう完全にどこから見ても綺麗なお嬢さんである。

「…」

 化粧の上からでも分かるほど頬を赤らめて自らの身体を見下ろしている。両手を広げるように少し上げてみると長い振袖がふわりと揺れた。

「巻き込んで悪かったね。なに、ほうっときゃその内戻るから」
「そう…なんですか?」
「うん」

 いつの間にかバスは出てしまっているのだが、周囲の“観客”はその場を立ち去ろうとしない。
 雪駄を鳴らしながら花嫁に近づく町娘。

「さっきはよくもやってくれたな」
「え…」

 小動物みたいに怯えている花嫁。

「この野郎!」
「きゃっ!」

 止める間もなく町娘は花嫁の唇を奪っていた。
 二人の口紅が押し付けられ、ぬるりと乱れた。

「あ…」

 ショックの余りなのか白無垢の花嫁はその場に崩れ落ちる。先ほどマウントポジションに膝で仁王立ちしていたマッチョは面影も無い。

「あの…ちょっとあんた」

 珊瑚(さんご)が今度も仲裁に入ろうとする。

「お姉さんありがとうございます。…こいつもその内戻るんですよね?」
「まあね」
「ボクと同時に戻るんですか?」
「いや、全く分からない。個人差あるから」
「そうですか…」

 考え込んでいる町娘。良く見ると簪(かんざし)に施された装飾も目を引く。

「それまでに思い知らせてあげますよ」
「…なんか随分慣れてるよねあんた」
「実は劇団員でしてね。女装は毎日なんですよ。この頃は彼女よりも着付けが上手いなんて言われます」
「それにしたってその…」
「きわどい恰好も多いんで沖縄空手の秘儀も常用してまして」
「…何だって?」

 こういうタイプは初めて会った。案外取り乱さないもんだ。

「男が女になるなんてこれってどうせ夢でしょ?」
「夢…ああ、そゆこと」

 彼…今は彼女…はもう途中から夢だと思っていたみたいだ。

「行くぞゴルァ!」
「きゃっ!」

 無理やり引っ張り起こされる花嫁。
 その瞬間、ぽん!と音がしたわけではないが、そういう風にも見えんばかりに白無垢はマッチョへと逆戻りしていた。

「「あ…」」

 空気が固まる。
 その場にいたのは背の高い女(珊瑚(さんご))と町娘、そしてマッチョ男である。
 ヤバい!
 珊瑚(さんご)は身構えた。こちら陣営が圧倒的不利だ。
 もう一度やらなきゃならないか?
 そう思った次の瞬間。

「きゃあああああああ~~~っ!」

 甲高い“裏声”を発して忽(たちま)ちの内にマッチョは走り去っていた。
 思わず顔を見合わせてしまう珊瑚(さんご)と町娘。
 周囲の観客も茫然としていた。



 まあ、そんなこんなで暴漢を退治したってことで。
 その後の町娘になっちゃった彼がどうしたかって?
 その場で別れたから後のことは分からないなあ。
 でもまあ、基本的に夢だと思ってたみたいだからいいんじゃないかな。これと言って取り乱しても無かったし。
 それじゃ!


おわり

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